こちらは、1365年にフランス王国で発行されたシャルル5世「賢王」のフラン・ア・ピエ金貨です。PCGSにてMS64の鑑定を獲得しており、オークション会社の表記ではPCGS準最高鑑定クラス(MS64鑑定14枚)とされる、中世フランス金貨としてはかなり明瞭な個体です。
立像のシャルル5世と、王冠・百合紋章十字
表面には、ゴシック建築風の天蓋の下、王冠をかぶり正面を向いて立つシャルル5世が刻まれています。右手には剣、左手には王権と司法権を象徴する「正義の手(Main de Justice)」を持ち、左右にはフランス王家の百合紋章が配置されています。周囲銘文は「KAROLVS DI GR FRANCORV REX」、意味は神の恩寵によるフランク人の王、シャルルと考えられています。
裏面は、中央に装飾的な四葉形を置いた、先端が三つ葉状の十字架のデザイン。区画には王冠と百合紋章が交互に配置され、周囲銘文「XPC VINCIT・XPC REGNAT・XPC IMPERAT」はキリストは勝利し、キリストは統治し、キリストは命令するという意味を持つとされ、中世フランス王権がキリスト教的な正統性によって支えられていたことを示すデザインという見方があります。
「徒歩のフラン」という名の由来
「フラン・ア・ピエ」は、直訳すると“徒歩のフラン”。父ジャン2世の時代に発行された、国王が馬上の姿で描かれる「フラン・ア・シュヴァル=馬上のフラン」に対し、シャルル5世が立った姿で描かれていることから、この名で呼ばれています。この金貨は、シャルル5世が即位した翌年、1365年4月20日の発行令により認可されました。
百年戦争のさなかに立て直された王国
当時のフランスは百年戦争の真っただ中にありました。父ジャン2世がポワティエの戦いでイングランド軍の捕虜となり、巨額の身代金や国内反乱で国家が揺らいでいたところを立て直したのがシャルル5世です。自ら前線で突撃する武闘派ではなく、財政・行政・軍制を再建し、ベルトラン・デュ・ゲクランらを起用してイングランド領を徐々に奪回したことから、「賢明王(Charles le Sage)」と呼ばれるようになったと伝えられています。
つまりこの金貨は単なる王の肖像ではなく、混乱したフランス王国に正統な王権と秩序が戻ったことを示す、国家再建の象徴と考えられています。
※歴史的背景に関する記述は、参考文献に基づく一般的な見方を紹介するものです。






