こちらは、フランス王フィリップ6世(在位1328〜1350年)の時代に発行された、エキュ・ドール・ア・ラ・シェーズ(Écu d’or à la chaise)金貨です。
本品はDuplessy 249/Friedberg 270に分類されるタイプで、重量は約4.50g。Duplessy 249は、1337年の第1次発行として位置づけられるタイプとされています。
百年戦争開戦期という時代背景
1337年といえば、フランスとイングランドの間で百年戦争が始まったとされる時代です。フィリップ6世は1328年に即位したヴァロワ朝最初のフランス王ですが、その王位継承に対してイングランド王エドワード3世もフランス王位への権利を主張しました。両国の対立は、やがて100年以上に及ぶ百年戦争へと発展していくことになります。
表面デザインが語る王権の正統性
表面には、ゴシック様式の玉座に座るフィリップ6世が描かれています。王は剣を手にし、フランス王家を象徴する百合紋章「フルール・ド・リス」の盾を掲げており、単なる肖像というよりも「自らが正統なフランス王である」という王権そのものを視覚化したかのような、象徴性の強いデザインとなっています。
裏面に刻まれた信仰の秩序
裏面には、四葉状の装飾の中に大きな十字架が配置され、周囲には「XPC VINCIT・XPC REGNAT・XPC IMPERAT(キリストは勝利し、キリストは統治し、キリストは支配する)」というラテン語銘文が刻まれています。表面には地上を統治するフランス王、裏面にはその王権を支えるキリスト教世界の秩序――中世ヨーロッパにおける「王権と信仰」の関係が、一枚の金貨の表裏に凝縮されていると考えられます。
同時代バリエーションとの違い
なお、同じフィリップ6世のエキュ・ドールには複数の発行区分が存在します。当店で取り扱うもう一枚のDuplessy 249A/PCGS MS63は第2次発行に分類される個体であり、本品(Duplessy 249/MS64)とは異なるバリエーションです。一見よく似た2枚ですが、発行時期や細部の特徴が異なる点にも歴史の奥行きが感じられます。
(本品)Duplessy 249/PCGS MS64
Duplessy 249A/PCGS MS63
PCGS鑑定・保存状態
本品は世界的な第三者鑑定機関PCGSによりMS64の評価を獲得した、 最高鑑定品(上位鑑定0枚)です。 約700年前に製造された中世金貨でありながら、王の姿やゴシック建築を思わせる玉座、 裏面の四葉形装飾と十字架など、細部まで良好な状態が保たれています。
歴史・実物資産としての価値
百年戦争というヨーロッパ史の大きな転換期に生まれた、ヴァロワ朝最初の王フィリップ6世の金貨。歴史的背景、ゴシック美術を思わせるデザイン、そしてPCGS MS64という保存状態を併せ持つ、中世フランス金貨の魅力を存分に楽しめる一枚です。






