こちらは、1869年にフランス第二帝政期に発行されたナポレオン3世(有冠タイプ)20フラン金貨です。NGCにてAU58の鑑定を獲得しており、流通品でありながら図案の細部までよく残る個体です。
月桂冠を戴く皇帝の肖像
表面には、月桂冠を戴いたナポレオン3世の右向き肖像が刻まれています。この「有冠タイプ(Tête laurée)」は1861年以降に採用されたデザインで、それ以前の無冠の肖像から、古代ローマ皇帝を思わせる月桂冠姿へと変更されたものです。周囲には「NAPOLEON III EMPEREUR」の銘文が配されています。
裏面には、第二帝政を象徴する紋章と額面「20フラン」、発行年、そしてストラスブール造幣局を示す「BB」のミントマークが刻まれています。「EMPIRE FRANÇAIS(フランス帝国)」の銘文も配され、共和政ではなく帝政国家であることを明示するデザインとなっています。
流通量の多さが物語る、第二帝政期の金貨
ナポレオン3世の20フラン金貨は、フランス第二帝政期(1852~1870年)を通じて大量に鋳造された貨幣で、この1869年BB年号だけでも7,316,553枚が発行されました。
パリだけでなくストラスブールをはじめとする地方造幣局でも製造されており、当時のフランスにおける金銀複本位制と、ラテン通貨同盟の共通貨幣規格を示す資料としても位置づけられます。
ナポレオン3世は、伯父にあたるナポレオン1世の帝国的威信を継承する形で皇帝に即位し、パリ改造や産業振興などの近代化政策を推し進めました。
しかし、この金貨が発行された翌年の1870年、普仏戦争で敗北し、セダンで皇帝が捕虜となったことを契機に第二帝政は崩壊します。第二帝政末期の繁栄と、その終焉直前の時代を伝える一枚といえるでしょう。
※歴史的背景に関する記述は、参考文献に基づく一般的な見方を紹介するものです。






