「もし正式採用されていたら」――5マルクの試作デザイン
本品は1927年、ドイツ・ワイマール共和国で制作された5ライヒスマルク試鋳銀貨です。
テーマは、当時の大統領パウル・フォン・ヒンデンブルクの80歳記念。通常の流通貨ではなく、正式採用前のPattern=試作・試鋳デザインとして制作された一枚です。
つまり、「もしこのデザインが正式な5マルクとして採用されていたら?」という、通常貨とは違った貨幣史を楽しめるコインです。
表面にはヒンデンブルクの肖像
表面には、パウル・フォン・ヒンデンブルクの右向き肖像。周囲には、
REICHSPRÄSIDENT VON HINDENBURG
と刻まれています。
下部には、
1847–1927
の年号。これは生没年ではなく、1847年生まれのヒンデンブルクが1927年に80歳を迎えたことを示す記念年表記です。
力強い肖像表現は、カール・ゲッツらしい存在感があります。
裏面には共和国とヒンデンブルク家の紋章
裏面には、ワイマール共和国を象徴する鷲の紋章と、ヒンデンブルク家の紋章が組み合わされています。周囲には装飾的な意匠が大きく配され、通常の流通貨というより、記念メダルに近い美術性を感じさせるデザインです。
この、「貨幣としての5マルク」+「記念メダル的なデザイン」という組み合わせが、本品の特徴です。
カール・ゲッツによる試作貨
デザインを手掛けたのは、ドイツのメダル芸術で知られるKarl Goetz(カール・ゲッツ)。本品は作品目録でKienast-386に分類されています。
ゲッツは多数のメダルや試作貨を手掛けており、本品も単なる記念銀貨ではなく、ひとつの貨幣デザイン作品として楽しめる一枚です。
「Small BAYER」エッジ
PCGSラベルには、
Edge: Small BAYER
と明記されています。同じKienast-386でもエッジ仕様によるバリエーションがあり、本品はSmall BAYERタイプに分類されています。
試鋳貨では、こうした細かな仕様違いもコレクション上のポイントになります。
PCGS SP64
本品はPCGS SP64。Specimenを意味するSPグレードが与えられており、試作・特別製造品として評価されています。
Small BAYERタイプには本品より上位の鑑定個体も存在するため最高鑑定ではありませんが、SP64という高い状態で、ゲッツの細かなデザインを十分に楽しめる個体です。
TLCコメント
これ、通常貨とは面白さの方向が全然違います。正式に発行されたコインなら、「実際にこうなった歴史」を見るもの。でも試鋳貨は、「こうなる可能性もあった歴史」を楽しめます。
しかも、ヒンデンブルク80歳、カール・ゲッツ、5ライヒスマルク、試鋳貨、PCGS SP64という組み合わせ。
7万円台で本格的なドイツ試鋳貨を楽しめるという意味でも、かなり面白い一枚です。
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