1718年、神聖ローマ帝国のハルツ地方・ゼラーフェルトで製作された、非常に特徴的な洗礼ターラー(Tauftaler)です。
一般的なターラー銀貨では、君主の肖像や領邦の紋章が主役になります。
しかし、このコインに描かれているのは「キリストの洗礼」。
表面には、ヨルダン川でイエス・キリストに洗礼を授ける洗礼者ヨハネの姿が描かれています。
上方には聖霊を象徴する鳩。
さらに、その上には光背とともにヘブライ語の四文字神名「YHWH(テトラグラマトン)」が配されています。
単なる装飾ではなく、洗礼というキリスト教における重要な場面そのものを、一枚の銀貨に表現した非常に宗教性の高いデザインです。
「洗礼ターラー」という特別な存在
このタイプはドイツ語でTauftaler(洗礼ターラー)と呼ばれます。
ハルツ地方をはじめとするドイツ圏では、こうした洗礼を題材とした大型銀貨やメダルが、子どもの洗礼を祝う贈り物や記念品として用いられる文化がありました。
そのため、この銀貨は単なる決済用の貨幣ではなく、
「人生の節目を祝うもの」
「信仰を形にした記念品」
という、通常のターラーとは少し異なる役割も持っていました。
裏面に刻まれた聖書の言葉
裏面はさらに印象的です。
全面近くを埋め尽くすように、聖書に由来する長文銘文が刻まれています。
人物や紋章を大きく配置する一般的な大型銀貨とは異なり、文字そのものが意匠となっている珍しい構成です。
下部には、造幣責任者Heinrich Horstを示すHHの記号も確認できます。
直径約52mmの圧倒的な存在感
本品は重量約29.1g、直径約52mm。
一般的なターラー銀貨よりもかなり大きく、実物を見ると「コイン」というより宗教メダルに近い迫力があります。
1718年の製作ですから、現在から約300年以上前。
それでいてPCGSでXF45の評価を受けており、キリストの洗礼場面、聖書銘文、周囲の文字など主要な意匠をしっかり確認できる保存状態です。
このコインの魅力
キリストの洗礼。
洗礼者ヨハネ。
聖霊の鳩。
YHWHの四文字神名。
そして、洗礼を祝う贈答文化。
宗教・歴史・大型銀貨という複数の要素が一枚に凝縮された、非常に物語性の強いターラーです。
ただ古いだけではなく、「なぜこの意匠なのか」「誰のために作られたのか」まで語れる一枚。
歴史背景まで含めて楽しみたい方におすすめしたい、1718年の洗礼ターラー銀貨です。
※歴史的背景に関する記述は、参考文献に基づく一般的な見方を紹介するものです。
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