ヴォルフガング・ハンニバル PCGS XF45
宗教と領邦統治、二つの権威を一枚に刻んだ1722年の大型銀貨
1722年、神聖ローマ帝国のオルミュッツ司教領で鋳造された1ターラー銀貨です。発行者はオルミュッツ司教ヴォルフガング・ハンニバル・フォン・シュラッテンバッハ。1711年から1738年までオルミュッツ司教を務め、1712年には枢機卿となった人物です。
本品は第三者鑑定機関PCGSでXF45の評価を受けた個体。約300年前の大型銀貨でありながら、肖像の巻き髪や衣装、裏面の複雑な紋章意匠など、主要なディテールがしっかりと残されています。
バロック時代らしい、存在感のある肖像表現
肖像面にはヴォルフガング・ハンニバルの右向き胸像が大きく配されています。豊かな巻き髪、衣装のひだ、胸元の装飾まで彫り込まれた姿は、18世紀初頭のバロック貨幣らしい重厚な表現です。直径は同年の博物館収蔵品で約44mm。手に取った際にも、小型銀貨とは明確に異なるターラーならではのスケール感があります。
紋章に表れた「聖職者」と「領主」の二つの顔
紋章面の中央には複合紋章。その上にはミトラと諸侯冠が置かれ、背後には司教杖、行列用十字架、剣が配されています。これは聖職者としての地位だけでなく、司教領を統治する領主としての権威も視覚化したものです。年号の「17」「22」が紋章を挟むように刻まれているのも、このタイプの見どころです。
クレムジール造幣所で生まれた、300年前の司教領ターラー
1722年銘の同型品は、現在のチェコにあたるクレムジール(Kremsier/Kroměříž)造幣所で鋳造されました。ザルツブルク博物館にも1722年の同型ターラーが収蔵されており、その個体は銀製・約28.5g・直径44mmと記録されています。
国王や皇帝の貨幣とは異なり、司教領貨幣は「宗教史」「神聖ローマ帝国の領邦史」「バロック美術」が一枚の中で交差するジャンルです。大型銀貨としての存在感に加え、誰が、どこで、どのような権威を背景に発行したのかまで楽しめる一枚です。
※重量・直径は1722年同型の博物館収蔵品データを参考にした目安です。本個体をケースから取り出して実測した数値ではありません。
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