PCGS Populationでは 1875 Medal Heydt Death Gilt AE の登録はMS64の1枚のみで、総鑑定数も1枚。現時点で上位グレードはなく、PCGS単独最高鑑定です。
1866年の戦争を「お金」で支えた財務大臣
本品は1875年、前年に亡くなったプロイセンの政治家・銀行家、
アウグスト・フライヘル・フォン・デア・ハイト
August Freiherr von der Heydt
を追悼して制作された金メッキ銅メダルです。
フォン・デア・ハイトは1801年2月15日にエルバーフェルトで生まれ、1874年6月13日にベルリンで死去。
プロイセン政府では商工行政や鉄道政策を担当し、その後は財務大臣を務めました。特に1866年、オーストリアとの戦争を前に再び財務大臣へ就任し、戦費調達を担ったことが彼の経歴の中でも大きな出来事となっています。
表面にはアウグスト・フォン・デア・ハイト
表面中央には、フォン・デア・ハイトの右向き肖像。周囲には、
AUGUST FREIHERR VON DER HEYDT
PREUSS. FINANZMINISTER
1801–1874
と刻まれています。
つまり、「アウグスト・フライヘル・フォン・デア・ハイト プロイセン財務大臣 1801–1874」という内容。1874年に亡くなった彼を、その翌年1875年に顕彰した追悼メダルです。
裏面に刻まれた強烈な一文
裏面には冠を戴いた家紋。その周囲には、
ER SCHAFFTE DIE MITTEL
FÜR DEN KRIEG VON 1866
と刻まれています。意味は、「彼は1866年の戦争のための資金を調達した」という非常に直接的なものです。
ここでいう1866年の戦争とは、プロイセンとオーストリアを中心に戦われた普墺戦争。フォン・デア・ハイトはこの年に財務大臣へ復帰し、準備金の活用、税・関税収入の前倒し、鉄道関連の資金調達など複数の手段を用いて戦費を確保しました。
「戦争」ではなく「戦争を支えた資金」を刻んだメダル
19世紀のドイツメダルには、皇帝、将軍、戦勝、軍事行事などをテーマにしたものが数多く存在します。しかし本品の主役は軍人ではありません。財務大臣です。
そして称えられているのも、「戦場で何をしたか」ではなく「戦争に必要な資金をどう用意したか」という部分。戦争史を軍事だけではなく、金融・財政という裏側から見ることができるのが、このメダル最大の魅力です。
金色でも、金貨ではありません
外観は鮮やかな金色で、大型の金メダルのような存在感があります。ただし素材は金ではなく、
金メッキ銅
Gold plated bronze / Gilt AE
です。
PCGSラベルにも Heydt Death Gilt AE と明記されています。19世紀メダルらしい華やかな仕上げを楽しめる一方、素材についても明確に区別された鑑定品です。
PCGS MS64・単独最高鑑定
本品はPCGS MS64。PCGS Populationでは同タイプの登録はこのMS64の1枚のみ。上位グレードも確認されていないため、PCGS Top Pop・単独最高鑑定となっています。
TLCコメント
このメダル、やっぱり一番面白いのは裏面です。普通の追悼メダルなら、「国家に尽くした」「偉大な政治家だった」くらいの表現になりそうなところを、「1866年の戦争の資金を調達した」と、ものすごく具体的に刻んでいる。
戦争を動かすには、兵士だけでは足りません。武器、輸送、鉄道、食料、給与――全部にお金が必要です。その「戦争の財布」を支えた人物を主役にしたメダル。
しかもPCGS MS64の単独最高鑑定。6万円台で、これだけ歴史の切り口がはっきりした19世紀ドイツメダルというのは、かなり面白い一枚です。
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